燃え上がる女性記者たち

試写にて。英語タイトルは「Writling With Fire」。02年にウッタル・プラデーシュ州でダリト(不可触民)の女性たちが創刊した草の根メディア「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波、の意)の活動を3年にわたって撮影し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で市民賞受賞、米アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるなど多くの国際映画祭で高く評価された21年のヒンディー語作品。3千年前からインド社会に浸透し20世紀半ばに非合法化されたのちも差別意識が根強く残るカースト制度の最下層に属するダリトの、とくに女性はレイプや暴力の被害をもっとも受けやすく最悪殺害されてすら警察がろくに捜査もしてくれない現実があり、そんな中でも教養と問題意識を武器に自分で取材し自分の言葉で語る女性ジャーナリストたちによって社会の不公平が可視化され時に行政を動かしていく。そのねばり強く柔軟かつタフな仕事ぶりは、確かにささやかながらも一隅を照らしつづける炎のよう。歌って踊るインドのエンタメ映画でも選挙の不正や警察の腐敗はしばしば描かれ、いろんな角度から社会問題に切り込み警鐘を鳴らしていると感じますが、本作がうつし出すのは100%のリアル。彼女たちが恨みを買い危害を加えられたりはしないだろうかという不安も正直おぼえつつ、それ以上に作品全体に通底する未来志向にグッとくるエンパワメント・ドキュメンタリーです。

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