キン・フー 武俠映画の王 後編

こと原題「大俠胡金銓第二部曲 斷腸人在天涯」。先日、台湾文化センターおよびアジアンパラダイスさん共催の台湾映画上映イベントのオンライン上映にて鑑賞。胡金銓監督の経典的名作の数々をゆかりの映画人らのコメントと共にたどった前編のある種の高揚感に比して、後編は原題からもうかがえるように不遇あるいは不如意な晩年の日々の様子が親しい人たちの口から語られる、感傷と追悼のパート。悲願だった「華工血涙史」の企画がついに動き出してからの急死は、当時本当にショックでした。鍾玲女史と離婚後の監督の晩年に寄り添った若い女性がいたことは今回初めて知ったのですが、新たなパートナーを得て新作の制作にも邁進できた最後の日々はきっと希望に満ちていたはずで、それだけに無念さもひとしおです。あらためて合掌。

前後編を通じて多々ある目うろこのシーンの中でも、胡金銓映画大好き、武侠映画大好き人間としては最後に石雋が朗読した、監督の著述の中の「武侠について」のくだりは感動と驚きと共に深く脳裏に刻まれました。というのも監督は人から「あなたは武侠映画の監督ですか」と聞かれるたび「ちがいます。私は、いうなればアクション時代劇の監督です」と答えていたそうで、以下、続きを原文から一部引用(なお、監督の手書きの繁体字から日本の漢字に便宜上変えてます)。「在中国、従来没有「武侠」這個階級、也没有這種「専業」。〜略〜「中国歴史上、「侠」是個行為的形容詞、〜以下略」)。

監督にとって武侠とは何ぞや、ちょっともっぺん宇田川幸洋氏の「キン・フー 武侠電影作法」を読み直してみるとします。