自画像:47KMのおとぎ話

YIDFFオンライン上映にて、先日。監督の章夢奇は2010年に「メモリー・プロジェクト(民間記憶計画)」というドキュメンタリー製作ワークショップに参加して以来、毎冬に父方の故郷の寒村に滞在して「自画像」シリーズを撮っている。というのは後付けで知ったことなんですが、このシリーズの1本「自画像:47KMに生まれて」を自分は2016年にこの映画祭で直接見てました。というのも恥ずかしながらあとから「そういえば47KMというタイトルの映画を見た記憶がある」と思い出したという、ようするに表題作は今回ほとんどまっさらで見たに等しいのですが、とても良かった。なんだかしみじみ癒されました。本当に田舎のひなびた村で、夜になると漆黒の闇。若い働き手は出稼ぎにいって村にいるのは老人と子供ばかり。そこに監督(もともと舞踏家)は10年通ったことで村の人たちと交流を深め、過去作品に映っている小さかった少女が年々成長して姉妹のような関係に。今回監督はカメラを少女たちにも持たせて自由に撮らせたり自分も撮られたりしながら、図書館や舞台や集会所になるらしいコミュ二ティセンター的な石造りの「青い家」を建築。さすがに建てるのは業者とおぼしき男衆ですが、監督は子どもたちにどんな家がいい?と好きにデザインを描かせたりして、まるでみんなの夢が少しずつかなっていくかのように家ができていく。原題の「童話」さながらの、ゆったりとしてやさしい時間が流れていく純朴で美しい作品でした。