キン・フー 武俠映画の王 前編

こと原題「大俠胡金銓 第一部曲 先知曾經來過」。先日、オンライン上映にて。「遠い道のり(原題:最遙遠的距離)」の林靖傑監督による、胡金銓クロニクルともいうべきドキュメンタリー。前編は胡金銓作品の常連スターだった石雋と共に往年の撮影地をたどりつつ徐楓、鄭佩佩、許鞍華、王童、徐克、吳宇森、洪金寶、呉明才ほかほか監督の薫陶を受けたスターやスタッフ、影響を受けた監督や評論家たちのインタビューを中心に構成され、2時間強があっという間に感じられる面白さでした。欲をいえば白鷹や李安も登場してほしかったけれども上映後のアフタートークによればこの映画の製作に当たって考え得る人たちにはあまねくアプローチした結果このような陣容になったとのことで、とても周到な企画だったのだなと逆にかなり感動。個人的にはとりわけ呉明才のコメントがツボに入りまくりで、たとえば「空山霊雨」での彼のかぶりもの(蓮の花みたいな形の)は小物の1つ1つにもこだわった監督が香港の電器店で見つけたランプシェードを改造したものという裏話には思わず爆笑。とにかく胡金銓ファンもしくは武侠映画ファンならたまらないエピソードが山盛り、ファンでなくともこれほどレジェンダリーな監督だったのかと目からうろこがいっぱい落ちたのではないかと。後編(原題:大俠胡金銓第二部曲 斷腸人在天涯)は、今度はもっと切ない流れになるのかもという予感がないでもないですが、絶対見たいと思っております。

6月30日追記:後編上映の詳細がアジアンパラダイスさんのHPでアップされました。こちらをどうぞ。