「破壊の自然史」「キエフ裁判」

先日試写にて。「セルゲイ・ロズニツァ<戦争と正義>ドキュメンタリー2選」と銘打って8月12日に同時公開となるいずれも22年作品で、前者は第75回カンヌ映画祭特別上映作、後者は第79回ベネチア映画祭正式出品作。ベラルーシ生まれ、ウクライナ育ち、モスクワの映画大学で学び現在はリトアニアを拠点に活動するセルゲイ・ロズニツァ監督は、ニッポンでは「新生ロシア1991」(15)「国葬」(19)「ドンバス」(21)など計10作品がここ2年ほどで次々と紹介され、自分は最初に「国葬」を見て以来この監督の特にドキュメンタリーのパワーと冷静さ、はかりしれない知性に圧倒され続け、と言いつつ全作品を見たわけではないのですがとにかく今の世界情勢の中できわめて重要な立ち位置にいる監督の1人と思える存在。第二次大戦末期に連合軍による史上最大規模の空爆で瓦礫と死体の山が築かれたドイツの都市の惨状を映し出す「破壊の自然史」と、戦後まもなくキエフで行われたナチ関係者15人に対する軍事裁判の様子を断罪の結末に至るまでたんねんに追った「キエフ裁判」は、ロズニツァ監督の面目躍如といえる全編アーカイブ映像から構成されたドキュメンタリー。これほどの映像が大量にアーカイブされていることの驚きや感嘆とともに歴史の検証の重さ、苦しさ、必要性をあらためてつきつめられるとてつもない映像体験を、ぜひ。

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