たゆたえども沈まず

オンライン試写にて。

2011年3月11日の東日本大震災からまもなく丸十年。東京居住の自分でも、あの日のことは忘れられない。たまたまその日はK県K市にいて、強い揺れに驚き、ほどなく市内が停電になり、もちろん電車も止まり、市役所に避難したあと友人のつてで泊めてくれる人が見つかり、寝つかれない一夜を過ごした。何が起こったのかを認識したのは当日の夜遅く、泊めてくれた家の人のパソコンで津波の映像を見て、絶句。そのあと一ヶ月くらいは日常生活に戻ってもなんとなく精神の焦点が合わずぼんやりしていたような・・スーパーからごっそり食料や物資がなくなり、原発事故が絶望感に追い打ちをかけ、この国ほろびるのか?とうっすら感じたり。そうこうするうち早や十年。今は今でコロナ禍の出口が見えず、あらためてこの国やばくないですか。

と、長々と自分語りですみません。表題作は震災直後からずっと取材・報道を続けてきたテレビ岩手が地道に撮りためてきた膨大な映像を1本の映画に編集したドキュメンタリー。復興したものとしていないもの。変わったものと変わらないもの。命をつないだ人と見つからないままの人。。。海沿いの町から避難してきた人たちがたちすくむ高台で現場のカメラがとらえた津波の映像のおそろしさたるや。そうしたさまざまな記録と記憶の向こうに十年の歩みが見えてきて、思わず涙を誘われたりもしつつ、何かを教訓にしてほしいとか、現地ではこんなに辛い思いをしてきたことを知ってほしいとか、前向きに生きる人たちに勇気をもらってほしいとか、そういう意図や目線をできるだけ入れ込まないフラットな作りになっているのが胸にひびく真摯な作品。地元もさりながらそれ以上に東北以外の地域で紹介されることに大きな意味があるように思えます。

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