マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白

先日試写にて鑑賞。先の大阪アジアン映画祭で見逃しており、公開が決まったおかげで見られて良かった。にしても二重に驚きのドキュメンタリーでした。1つは、北朝鮮から中国へ1年限りの出稼ぎのはずだったのが実は騙されて農村の男に売り飛ばされたマダム・ベーがあきらめて男とその両親と暮らし中国語も覚えた後に北朝鮮に残してきた夫と息子たちを助けるため脱北ブローカーとして暗躍(?)するまでになるタフさ。もう1つは彼女に「私を記録しなさい」と言われてそのとおり密着取材した結果タイに不法入国し韓国へ強制送還(そのさい韓国政府は助けてくれずフランス政府の力を借りたとのこと)されたユン・ジェホ監督の好奇心なのか使命感なのか無鉄砲なのか巻き込まれたのかその全部かもしれないけれどとにかく映像作家としての行動力のはんぱなさ。その両方のどちらが欠けてもできなかった作品で、まさに事実は小説より奇なり。どこにでも根を張り下ろす雑草のようなとりあえずの生命力がまずあってあとから精神力なり新たな状況への対応力がついてくるマダムベーの根源的強さの前にはその行動原理に対するあらゆる憶測や疑問符がはじき返されてしまうのでした。
6月上旬、シアター・イメージフォーラムにて公開。