彼女のいない部屋

試写にて。昨年のカンヌ映画祭で主演のヴィッキー・クリープスが「ある視点」部門最優秀演技賞を得た、名優であり名監督でもあるマチュー・アマルリックの最新作(出演はしていない)。夫と子供を残して家出をしたかに見える主人公のとりとめない旅路と、つむがれていく物語の向こうに浮かび上がってくる真実と。。と思わせぶりな説明になりましたができれば何も知らずに見ることをおすすめしたい、胸をしめつけられずにはおかない珠玉の作品。プレスに記載の原題は「SERRE MOI FORT(私をつよく抱きしめて)」ですがカンヌ出品時の原題は「COUSAGE(コサージュ)」だったようで、いずれの直訳にもしなかった含蓄ゆたかな邦題にもうなりました。

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モガディシュ 脱出までの14日間

日劇場にて。韓国が国連加入を目指していた1991年、ソマリアでロビー活動に精を出す韓国の大使館は現地で優位に立つ北朝鮮大使館と犬猿の仲だったが、反乱軍の蜂起が内戦に拡大し無法地帯となった首都モガディシュで両大使館関係者は国外脱出のため呉越同舟せざるを得なくなる。。まさに役者がそろった感のある主演から脇役までキャストたちのツラガマエもモロッコで再現されたという当時の地獄絵図の迫力も圧巻。韓国で昨年のナンバーワンヒットを記録した、映画を見ればわかる事情により長らく伏せられていた実話が約30年を経てスクリーンに焼き付けられたという意味でも個人的にはリュ・スンワン監督の目下最高傑作と言いたい出来栄えで、終盤、キム・ユンソクとホ・ジュノに泣かされ、「なまず」のだめんずキャラとは真逆のク・ギョファンの鋭利な刃物のような存在感にも惚れました。。自分が行った回は平日昼間でしたがなかなかの入りで、韓国映画ファンというわけでもないらしい(どの俳優も知らなかったもよう)カップルが「面白かったねー!」と帰りぎわに話しててなんか勝手に嬉しくなったりも。

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呪詛

こと原題「咒」。Netflixにて。今年3月に台湾でヒットした、台湾のある一族に伝わる秘密の儀式を録画しようとしたユーチューバーたちが禁忌をおかしたことで次々と関係者に祟りが広がっていく話題のホラー。むちゃくちゃ怖いという感想をSNSでいくつも見かけたので覚悟してましたが実際やばかった。。時々理解がおいつかないというかえっなんなのこれ的な不安をかきたてる思わせぶりもぬかりなく、絶叫系やスプラッタ系とはちがう精神的に侵食されていくような観客参加型のコワさはまじでガチ。先日アップした「女神の継承」をちょっと思い出させたりもする録画映像をつなぎあわせた作りなのと出演者が自分の知らなかった俳優さんということもあって臨場感もはんぱなく、21世紀版&台湾版「リング」的な印象もあり(ちなみに「リング」は自分にとって過去一番のトラウマ映画。当時数日間ひきずりました^^;;)。ねとふり直行でなく劇場公開されてもよかった気がしますが、このまがまがしい物語にモデルとなった実話があるというのがまたコワすぎます。

 

ソー:ラブ&サンダー

劇場にて。アメコミ映画はお代の分プラスαはしっかり楽しめるという安心感とともにそこそこ見てきてはいるのですが順番どおりでなかったり以前見ていてもいろいろ忘れていたりというゆるゆるなスタンスなので今回も「ええと、これまでどういうことがあって今こういうことになってるんだったかな」と推測まじりではありましたがクリヘムとナタリー・ポートマンのダブル・ソーやクリスチャン・ベールのいつもながらの驚きの肉体改造やラッセル・クロウのノリノリぶりやマット・デイモンの贅沢すぎるちょい役やガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのこれまたほとんど活躍しないもったいなさ等々わちゃわちゃと楽しんで最後はまんまとちょっと感動したりしてちゃんとお代のもとはとれました。ちなみに余談ですが予告編で何度も見てきたクリヘムがゼウスの魔法?で脱がされる場面で「少林サッカー」の終盤のハイライトが脳裏によぎってしまうのはたぶん自分だけですよね。

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哭悲

原題同じ。劇場にて。専門家の警鐘にもかかわらず一般には風邪程度の症状と思われていたウィルスが突然変異を起こし、感染した人は殺人鬼に変貌。あっという間に台湾全土を阿鼻叫喚の惨劇が覆っていく。。コロナのパンデミックが一向に終息しない現実世界とはからずもリンクする部分のあるゾンビ映画の進化系。グロさとキモさと後味のわるさは期待?以上でした。これが初長編作品というカナダ出身で台湾在住のロブ・ジャバズ監督、ただものじゃないかも。。

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マーベラス

こと原題「The Protégé」。凄腕暗殺者のムーディ(サミュエル・L・ジャクソン)が何者かに殺され、幼いころから彼に育てられた弟子アナ(マギーQ)は復讐を心に誓う。そんな彼女の前に、事件の黒幕に雇われた男レンブラントマイケル・キートン)が現れ。。いつもながら美しくファッショナブルでスレンダーでときどき余貴美子似のマギーQ主演のハードボイルド・クライムスリラー。エンドクレジットではマイケル・キートンの名前がトップに来るのでダブル主演のようですが、印象としてはレディ・アクション寄り。ヒロインはベトナム人という設定で実際ベトナムの血が入っていてアクションも達者なマギーQはどんぴしゃなキャストだけど、肝心の話は因果関係がよくわからないところがあって時々頭の中でクエスチョンマークが点滅。アクションはとくにマイケル・キートンががんばっていておおやるじゃないかとちょっと萌えました。全体的にはふつうに面白かったです(すいません)。

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リコリス・ピザ

劇場にて。70年代、ハリウッド近郊の町で15歳の少年が25歳の女性に一目惚れし速攻でデートに誘うところから始まる、子役としてショービジネスの世界を知るいわゆるマセガキと厳格なユダヤ家庭に育ち外のキラキラした世界に憧れるヒロインの、恋というにはギャップが大きいつかず離れずの関係を描くノスタルジーと疾走感はじける青春映画。嬉しいとき人恋しいとき困ったとき、二人して、あるいはひとりで彼らはとにかく走る走る走る。走ることイコール全力で生きている、その若さ、まぶしさといったら。主演はいずれも新人、とはいえ一般人というわけでもなく、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品の常連だったフィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンとアラナ・ハイム(初めて知った名前ですがハイムという三姉妹によるロックバンドの一員だそうで、映画に登場する彼女の家族がなんか似てると思ったら実際に家族ぐるみで出演していたもよう)。等身大の魅力あふれる二人を筆頭にショーン・ペンブラッドリー・クーパーら客演のスターたちも実に楽しそうで、例によって前知識をほとんど入れずに見て十分ぐっときましたがあとからこちらの解説とかで復習したら感慨もひとしおでした。

ちなみにリコリスというのは甘草の一種で漢方っぽい味がするようですが自分はたぶん一度も口にしたことがありません。そしてまた、映画にピザは出てきません。タイトルの意味あいは先の解説サイト等に書かれています。

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