ピザ 死霊館へのデリバリー

インディアンムービーウィーク2022にて。2012年のタミル映画で、作品紹介に「タミル・ニューウェーブのカルト的作品」「ホラー作品としては突出した高評価を得た」等とあるのと主演がヴィジャイ・セードゥパティなのでチョイスしましたら、なるほどこれはなかなかの掘り出し物感。邦題が示すとおりピザ屋で働く男がある屋敷に配達に行って身の毛もよだつ恐怖体験をする物語、からのさらに別の方向へ予想外の展開となっていく異色のインド・ホラーで、2時間ちょっとの尺とか、呪い系とリアルミステリーの組み合わせとか、自分がこれまでに見たインド映画の中ではかなり珍しい部類に入る、いい意味でB級映画的快作。スターになる前のまだあまりマッチョではないヴィジャイ・セードゥパティのうまさも光ってました。

デリシュ

こと原題「DÉLICIEUX」。オンライン試写にて。革命前夜のフランス、美食家の公爵の屋敷で料理長をつとめていた男があるできごとにより屈辱的な形で解雇され、田舎へ戻ったのち弟子入り志願の中年女との出会いを経て料理への熱意を取り戻すが。。。一般人が外食する習慣がなかった時代の、レストランという概念のはじまりのはじまりを滋味ゆたかに描くグルメ&リベンジエンタメ。料理映画大好き人間としては「うわー。ジャガイモとトリュフのパイ!」「うわー。ジュヴレ・シャンベルタン!」と時おりじゅるじゅるしながら時代背景や風俗も含めて興味深く楽しく味わいました。21年にフランス映画祭で上映され、劇場公開は9月を予定。公式サイトはこれから?のようです。

ザ・ロストシティ

劇場にて。本来ならまだまだ夏休み気分ではないところをまさかの梅雨明けのみならずまさかの酷暑続きではからずも夏休み映画みたいな公開タイミングになったアドベンチャー・ラブコメサンドラ・ブロックが製作と主演を兼ねた本作、キャッチコピーには「先読み不能な」云々と書かれてるけど、○○○はずの○○○が○○○いたのが読めなかったほかはザッツ予定調和なお約束の展開を安心して楽しめる暑気払いの1本でした。基本、ほめてます。

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稽古

厳密には稽古ではなく昇段&称号審査@I道場。かつ自分が審査を受けたわけではなく見学のみ。しーふーいわく「僕がつくった居合の型は、むずかしいけどそこに技術的なものも全部、自分が伸びるようにできている」「結果を出そうとしてやるのではなく、でも結果を出さなきゃならない」

犬王

公開開始後一ヶ月近くも経過しての劇場鑑賞。例によってざっくりした予備知識のみでしたがこれは劇場のスクリーンで見ないといかんやつと思っていたので間に合ってよかった。そしてほんとにすごく良かった。ロックでポップでアヴァンギャルドで、時勢と才能が出会って生まれるべくして生まれた「芸」の力がみなぎるミュージカル・アニメ。勝者の目線で語られる歴史への真っ向勝負と、魂鎮めのテーマと、「名乗り」の霊性(琵琶法師の友魚の自称の変遷)にがっつりひきこまれました。

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さらば、わが愛 覇王別姫

劇場にて。言わずとしれた陳凱歌監督の経典的名作を日本での劇場上映権が切れるにあたって94年公開当時の35mmフィルムで特別上映という貴重なチャンスに、連日満席のチケ取りを遅ればせながらクリアしてものすごく久しぶりのスクリーン鑑賞。この映画が製作されてから約30年の年月をいろんな意味でかみしめつつ、感慨また感慨。。。中国映画も香港映画も、中国も香港も、思えば遠くへ来たものです。

素晴らしき眺め

こと原題「奇跡:笨小孩」。Netflixにて。ねとふりのトップページをチェックしていてふと気づいた作品なんですが、なんとこれ今年の2月に大陸で公開された文牧野監督(「我不是薬神」)の最新作にして、主演が易烊千璽。もう速攻で見ましたね。なにしろここ数年易烊千璽の売れっ子ぶりはすさまじく、しかもいい仕事しかしていないハズレなしのトップアイドル。本作もまた期待を裏切らないハマり役で、文牧野監督の手腕の確かさにもあらためて感じ入りました。2013年の深圳を舞台に、スマホ修理で日銭を稼ぎ幼い妹と二人細々と暮らす青年が、亡くなった母と同じ心臓病をかかえる妹の手術代を捻出するため修理屋の腕を生かし一攫千金を期してベンチャービジネスを始めるが、次々とトラブルが起こり追い詰められていく、、という波乱と人情の物語は「我不是薬神」路線を踏襲するヒューマンドラマ。キャスト的にも王傳君、徐崢、章宇らが「我不是〜」とは別イメージの役どころで客演したり、近年俳優づいている(のか?)田壮壮監督がまた「ええ人や〜」なキャラで顔を出したりと、共演者なり劇中キャラなりがこぞって易烊千璽=主人公を応援というか祝福している感じが作品の胸アツ感にあずかって、いやほんと最初から最後までぐいぐい見せる出来栄えです。いっそ劇場公開してほしかったですが、そこまで需要はないのかなあニッポンだと。。

ちなみに、なんで「素晴らしき眺め」なんていう(すいません)邦題かというと、英語タイトルが「NICE VIEW」なのでそのまんまといえばそのまんま。で、何がいい眺めなのかというとネタバレにはならないと思うのであらかじめ書いちゃうと、易烊千璽演じる主人公の名前が景浩(ジンハオ)で、おそらくその名前由来であろう彼のいとなむスマホ修理店の店名にしてその後ベンチャーで起ち上げた社名が好景(ハオジン)つまり良い景色という意味なのでした。もちろんそれはメタファーでもあると思います。

もう1つ、これもネタバレにはならないと思うんで書いちゃいますが易烊千璽ら出演者たちが歌うエンディング曲はBeyondの「海闊天空」。ただでさえこの曲を聴くだけで涙腺やられるのに、そこにもってくるかという。。