異国での生活から

先日、ベトナム映画祭2023にて。出稼ぎに来た台湾で不法滞在者となったベトナム人女性タオ・ヴァンの苦難と奮闘の日々を中心に数名の不法滞在ベトナム人労働者の姿を追った、曾文珍監督による社会派&ヒューマンドキュメンタリー。監督の名前はどこかで聞いたような、と思ったら05年の東京国際映画祭で上映された「飛び魚を待ちながら(原題:等待飛魚))」の監督でした。ニッポンではベトナム人を含め外国人労働者の低賃金やひどい労働環境の問題がしばしば報じられていて実に腹立たしいことですが、台湾でも似たような問題があることを今回初めて知り、人でなしの雇用主に国境はない(?)と痛感。ただ、それ以上に強く印象に残るのは、高い仲介料を払って(つまりベトナム側にも人でなしのボッタクリ業者がいるということ)来た以上はその元をとるためにも働いて家族に仕送りを続けるしかなく各種の肉体労働をこなす中で達者な中国語を身につけたタオ・ヴァンの次第に苦境にあるベトナム人仲間のめんどうも見るようになっていくタフさと責任感。もちろん事情は人それぞれであり途中で心が折れたかのように帰国していく人たちもいる中で、4049日の滞在ののち自ら出頭し、ヴィトンのバッグを手に凱旋帰国(と言って良いかと思う)する彼女の勇姿に内心で拍手を送りました。