望郷

こと原題「投奔怒海」(82)。JAIHOにて。70年代、南北統一後のベトナムを舞台に勝ち組が負け組を弾圧する海外では知られない闇の部分に切り込んだ許鞍華監督によるニューウェーブ期の社会派映画の傑作で、自分としてはたぶん90年代にレンタルビデオで見て以来の再見。当時は「望郷 ボートピープル」というタイトルで知られ、TVスターだった劉徳華の映画での出世作というのも香港映画ファン的に見どころだったと思いますが(もちろん今ではさらに見どころ)、以来幾星霜、長年香港映画ファンをやり香港社会そのものの変遷も半ばわがことのように追ってきて映画を見る目の解像度もあがった今見ると感慨も感傷もはんぱなく(実のところ劇中の使用言語については往年の香港映画らしいアバウトさ満載。でも映画的熱量がそれを凌駕する)、それとともにあらためて許鞍華監督の力量に五体投地の思い。女性監督なのにとかじゃなくなんのエクスキューズもなく監督としてすごかったし、現在に至るまでコンスタントに話題作を撮り続けているという意味でまちがいなくレジェンドの一人なのだなと。

JAIHOさんありがとうございます。