すべてうまくいきますように

劇場にて。脳卒中で重い麻痺が残り安楽死を願う高齢の父とその気持ちを尊重しつつも葛藤する娘たちの〝その日〟までのてんやわんやといっても過言ではないてんまつを描く、名匠フランソワ・オゾン監督の熟練かつ珠玉の作。監督のメッセージ映像を見ると、原作は監督と親しかった作家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説で、生前に彼女から映画化を打診されていたものの結果的にその死後に映画化されたとのこと。安楽死つながりで、だいぶ前の映画ながら強く印象に残っている「みなさん、さようなら」(03)というカナダ・フランス合作映画を時々思い出しながら見てましたが、当時とちがって今の自分が高齢の親を持つ身となっていることから人ごとではない感(もちろん安楽死ではなく、介護という点においてです。念のため)にときたま平常心がぐらついたりもしながら深刻なテーマなのにしばしば笑えてしまう全体のトーンに一種救われる思い。すべてうまくいくって、誰にとっての?どんな形での?と考えさせるタイトルの含蓄も良き。そして主演のソフィー・マルソーが実に魅力的な年のとりかたをしていてふとした瞬間にイザベル・ユペールかと思うほどでした。

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