こと原題「美國女孩」。Netflixにて。昨年秋の東京国際映画祭で見そびれてしまった話題作を、一般公開にはなりませんでしたがねとふりで見られてありがたしです。03年、SARSの感染拡大におびえる台湾で、乳がんの治療のため医療費の高いアメリカから娘2人を連れて台湾へ戻った母(林嘉欣)と、中国に単身赴任していた夫(莊凱勛)と、久しぶりに一家揃っての生活が始まる。だが学校になじめずアメリカに帰りたくて仕方がない13歳の長女と治療のストレスでいらだちをつのらせる母が衝突を繰り返すようになり。。これが長編デビュー作ながら金馬奨で七部門ノミネート、うち最優秀新人監督賞、同新人俳優賞、同撮影賞を獲得した阮鳳儀監督の半自伝的作品。ガラケーやパソコン通信、体罰教師などディテールは約20年前の様相ながら、SARS時代の不安感がはからずも今のコロナ禍と重なる上に親子や家族の普遍的テーマがひときわ同時代性をもたらし、なるほどこれは台湾映画における昨年有数の収穫だったのだろうなと感じ入る秀作でした。
ちなみにパワハラ女性教師と対照的な優しい女性教師役を演じているのは、本作の監製であるトム林書宇の妻・キミ夏于喬。また林嘉欣のキャスティングも林監督の「百日告別」つながりらしく林嘉欣自身が二女の母というのも役どころにぴったりだったかも。