「イントロダクション」「あなたの顔の前に」

試写にて。名匠ホン・サンスの長編25作目である前者は21年のベルリン国際映画祭銀熊賞脚本賞)、長編26作目の後者は翌22年に同賞を連続受賞。やさしく繊細そうで優柔不断にも見える青年をめぐる3つのエピソードから成る前者と移住先のアメリカから長年ぶりに韓国へ戻ってきたどこか思いつめた様子の元女優の1日を描く後者は、それぞれ別の物語でありつつ続けて見るとまさしくタイトルどおり前者が後者のイントロダクションと思える共通性(キャストやいくつかのモチーフ)・連続性に同時公開も大いに納得の逸品。とくに印象的だったのは、おなじみホン・サンス作品のミューズであるキム・ミニが出演ではなくプロダクション・マネージャーとして参加した「あなたの顔の前に」が毎度のグダグダ感(いい意味で)でなく明確なストーリー性の中に静かな緊張感がみなぎって、初めてホン・サンス監督とタッグを組んだベテラン女優イ・ヘヨンがホン・サンス作品のもうひとりの新たなミューズ降臨と確信させる圧倒的存在感でした。

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