慶州(ヒョンジュ) ヒョンとユニ

昨年、劇場にて。14年の作品でずっと見たいなあと思っていたのが19年にロードショーとなり観に行きました。感想のアップが遅きに失しておりますが、忘れていたというより観たまま胸にしまっておいたというか、自分としてはとても好きな作品だけど何がどういいのかうまく説明できないというか。チャン・リュル監督の映画は大多数を見ていて全てが好きなので多分理屈じゃなく生理的・感覚的に好きなのだと思われ、本作もまた。北京で大学教授をしている主人公(パク・ヘイル)が先輩の葬儀のため韓国に一時帰国したさい先輩との思い出がある慶州に足をのばし、かつて行った茶屋で当時とは異なる新しいオーナー(シン・ミナ)と運命のような運命でないような出会いをする物語は、ホン・サンスっぽいグダグダ感と、ぽくないスピリチュアル感と、そのあわいに生じるこれはもしかして夢なのかなと思う不思議な時間感覚とノスタルジーが一編の長い詩のごとくあるいは記憶の無限ループのごとく。ふだん映画を見ていてああそろそろ終わるなと思うと大抵それからほどなく映画が終わるんですが本作ではその予感がはずれ、さらにその先があったのが個人的にはちょっとだけ意表をつかれたんですが、でも、だからなんだというのでは全然なくて、やっぱり自分はチャン・リュル映画に無意識レベルでただただ惹かれる。近年チャン監督の分身的存在のごときパク・ヘイルの今回も魅力的なつかみどころのなさ、すばらしくシンプルなよそおいの静かでさみしげなシン・ミナのたたたずまいもしみじみと美しく切なかった。

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