99分、世界美味めぐり

試写にて鑑賞。タイトルから、世界中の旨いものを求めて取材した映画かと思っていてそれはそのとおりではあるのだけれど、食事そのもの以上に「美食ブロガー」すなわち自腹(または親の金)で各国を食べ歩き批評を発信しているスーパー美食家たちの密着ドキュメンタリーでした。登場する、その道では超有名人であるらしい美食家たちは5人。自分の舌と長年の食べ歩きキャリアを武器にミシュラン三ツ星レストランであっても時に酷評を下す中年男性から、モデルとして世界を旅しながら名店をめぐるスレンダー美女、タイ出身でロンドン在住の青年、香港のサラリーウーマンまで顔ぶれはさまざま。その1人が語る「どうせ食べるなら美味しいものを食べたい」というのは激しく同意。目当てのレストランのために遠くの国まで行くのと驚かれる(あきれられる?)ような情熱に関しても目当ての映画を見るためだけに香港とか台湾とか行っちゃう気持ちとそう違いはないと思うのでまったく違和感なし。ただ、気に入らなかった料理に対して「最悪」とか「素材が台無し」と一刀両断にしたりシェフの反論にまったく耳を貸さない系のおやじに関しては、それが何百万というフォロワーをかかえる有名ブロガーとしての個性なのだろうけどぶっちゃけ品がないなと…まあしかしそれで自信をなくすようでは名店のシェフなどやってられないと思うし面子と面子の火花の散るようなぶつかり合いもまた興味深いものがありました。
ちなみに自分の見聞きする範囲にもいわゆる美食家の方たちがそこそこおられるんですが、こういうのが一番スマートかなと思うのは、美味しいと思ったら美味しかったとシェフに伝え、あんまり美味しくなかったらごちそうさまでしたとだけ言って帰るという人。逆に一番ゲスだと思ったのは全然知り合いじゃなくてたまたま某フレンチレストランで近くの中年男性が支配人を呼びつけて「この肉、最低」と大きな声で言っているのが聞こえてきたとき。たぶん実際に美味しくなかったんだろうけど、わざと周囲に聞こえるように言ってるあんたがサイテーだろと内心で悪態をついてしまいました。もちろん口に合わないのを食べきる必要はなく、残してしまうのはしょうがない。
と話がそれましたが、日本も含めて各国の美味しそうな(とても手の届きそうにない)食事や厨房の様子を見ているだけでおなかがぐうぐうなりそうな眼福な映画でありました。中でも一番、これは旅費を工面してでも行けるものなら行ってみたい!と思ったのが杭州の高級中華レストラン。タイの青年が涙をこぼさんばかりに感動していて、羨望を覚える一幕でした。
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