「菖蒲」「桃さんのしあわせ」

「菖蒲」(公式サイトはまだのようなので上映館のサイト)は一昨日、「桃さんのしあわせ(原題:桃姐)」は昨日、試写にて観賞。アンジェイ・ワイダ監督の前者は死の気配が壮絶なまでに満ち満ちた、それでいて(それゆえにか)壮絶なまでの美しさが強い印象を残す、そして許鞍華監督の後者(香港で公開時に見たので二度目)はこれも死の気配は濃厚ながら前者と異なり随所に笑いをちりばめてゆるやかに着実に近づいてくる別れの日までの時間をいとおしむように淡々と描いた、いずれも胸にしみる名品。


ちなみに香港映画ファンなら「桃姐」に登場する友情出演の豪華な顔ぶれだけでもちょっと泣きそうになるかと。香港映画界の疑似家族的な結束や許監督へのリスペクトをひしひしと感じ、宮雪花のかつてなくまっとうな(!?というか歳相応なというか)使われ方とかもグッときちゃいました。そしてまた、契仔(乾児子)といった、血縁でなくても家族同然か時にはそれ以上の結びつきが普通に(たぶん)存在し機能している人間関係の豊かさに思いを致しつつ昨今の有名人家族の生活保護騒ぎのような血縁原理主義による社会的魔女狩りの連鎖につい連想が及んでしばし暗い気分になったりもしたのでした。