アナザーラウンド

劇場にて。公開を楽しみに待っていた期間が長かったため内容に踏み込んだ情報を途中でうっかり知ってしまったのがちょっとくやしいんですがこれもし何も知らずに見たら泣いていたやつ。ビール好きでワイン好き(それ以外はほとんど飲まないけど)つまりそこそこのんべな自分は現在ではNGな十代後半から余裕で飲んでた世代でして、それでも劇中で高校生たちが日常的に飲酒できてるのはさすがデンマーク(?)とびっくり。ただしこの映画のポイントはそこではなくて生徒たちから退屈がられている教師4人が適度なアルコールを摂取することでがぜん授業のノリがよくなり学生受けも上々と分かってから次第に酒量がエスカレートして、、という微妙に身につまされたりもする悲喜こもごもの酔っ払いエンタメ。北欧の至宝ことマッツ・ミケルセンが今作もすばらしく、ダンサー出身だけあって満を持してのダンスシーンは極上オブ極上。教師の仕事って生徒に思いが伝わってなんぼなのかな、、と考えさせられる教育についての映画でもありました。

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シャン・チー テン・リングスの伝説

劇場にて。だいぶ前から予告編は繰り返し目にしていて、たいへん失礼ながらマーベルにしてはヒーローが地味といいますか何が売りのヒーローなのかよくわからなかった上にあまり期待値の高げなうわさも聞こえてこなかったのがいざ公開されたら急にシャンチー祭りが(局所的に?)始まって本日ニッポン公開初日かちこみしましたらなにこれハリウッドが作った本気のカンフー映画じゃん!とまあ自分の中でがんがんに盛り上がったじゃないですか、あの予告編の地味さは一体なんだったんでしょうわざとですかそうですか。とにかく少なくとも香港映画ファンならテンション上がるはずの要素がたっぷりで、初日につきねたばれは避けますが名優トニー梁朝偉が実質主役の見せ場につぐ見せ場。シャン・チー役シム・リウもちょっと前にSNSで話題になってた以前はフリー素材のモデルだったというのを思うとまさにフリー・ガイというべきそこからのマーベル主役へのアメリカン・ドリームを見せてくれたアクションのキレと笑顔のかわいさに思わず応援モードに。オークワフィナとミシェル楊紫瓊とベン・キングズレー(!)と元華が一堂に会するうれしさとかまさかのモンスターバトルとかわが青春の(爆)「ホテル・カリフォルニア」とかいろいろツボに入りまくりでした。

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激殺!邪道拳

いつ見たか思い出せないくらい前に一度見てますが、ようつべに上がってると友人から聞いたのとチバちゃん追悼の意をこめて、さらに共同監督の1人が陳胴民で息子の陳可辛が子役で出ている(以前見たときはまったく認識してなかった)というのでびっくりして再見。77年当時に日本・香港・タイ合作でこんな本気のカラテ映画が作られていたとは明らかにブルース・リー映画の影響とはいえあらためて貴重。志穂美悦子、楊斯、鹿村泰祥ら共演の面々もディープだし、今回お目当の陳可辛が当時からかしこそうな少年で芝居もうまくて、この子が長じて大監督になるのだなぁとほっこり。いろんな意味ですごいストーリーは割愛します。

人生の運転手(ドライバー)〜明るい未来に進む路〜

こと原題「阿索的故事」。先日試写にて。原題のままでは邦題になりにくいのは分かりますが邦題がまた親切というかそのまんまの、恋人と破局後バス運転手に転職した王菀之演じる主人公の失意と再生を描く香港ローカルなラブコメ&ヒューマンドラマ。ちょっと小動物みたいなキュートさとコメディセンスが印象的な王菀之は、この役を演じるために本当にバス運転手の資格をとったそうです(えらい)。共演は、だめんず系の恋人役を梁漢文、元カノへの復讐に燃えるヤバめの男を姜皓文、バス会社の社長を袁富華、ヒロインの祖母役を邵音音といったおなじみの面々。ちょっと辛口に言うと全体の会話量が多く音楽も盛り盛りで、かつ話がスピーディに進むので全何話かのドラマの総集編みたいな印象もありですが、こんな風合いのこじんまりとした香港映画がいっぱいあった時代がとてもなつかしい(TT)

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ドライブ・マイ・カー

劇場にて。すごかった。脚本の強度あるいは密度に圧倒されつつ静かに深く見守る約3時間。それなりに読んではいるけれどハルキストではなく恥ずかしながらチェーホフもきちんと読んでいない自分に軽々に論評することはできずただただ反芻するのみであります。

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OLD オールド

劇場にて。予告編は幾度となく見てきて、とあるビーチに足を踏み入れた人たちが尋常でないスピードで年をとっていきしかもその場所から逃げ出そうとしても出られない、という設定を刷り込まれていたのが唯一の前知識というかそれが何を意味するのか予想もつかなかったのですが、おおおおそういうことかと納得(?)するまでそれこそ時間を忘れてひきこまれた、「時間」をめぐるスリラー。名匠シャマラン監督の意図したところかどうかはわからないですが見終わってふと自分の脳裏にうかんだテーマは「光陰矢の如し」でした。

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花椒の味

こと原題「花椒之味」。行かなかった先の大阪アジアンで上映以来、チャンスがあったらぜひ観たいと思っていたので公開が決まり試写で見ることができてありがたいことです。香港で火鍋屋をいとなむ父親の死をきっかけに、それまで互いに存在を知らなかった香港、台湾、重慶両岸三地で生まれ育った3人の姉妹が秘伝の火鍋を再現すべく力を合わせつつそれぞれの家族の問題と向き合っていく物語。鄭秀文劉徳華任賢齊、鍾鎮濤とビッグな顔ぶれ(友情出演も含めて)をはじめ台湾の頼雅妍、中国の李暁峰らピリリといい味のキャストが参集し、安定感のある端正な作りに心地よくひきこまれる、脚本家としても実績のある麥曦茵監督の感性が光る女性映画の佳品。終盤、ああここは泣くやつだなとわかっていてもうるうる。というかそれ以前にサミーとアンディ、サミーとリッチーの組み合わせがダブルでおがめるだけでも胸にせまるものがあるのでした。

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