すべて、至るところにある

日劇場で。「どこでもない、ここしかない」(18)「いつか、どこかで」(19)につらなるシネマドリフターことリム・カーワイ監督の“バルカン半島3部作”完結編。と紹介しつつ自分は前2作を見てなくてすみません、なのですが「マジック&ロス」(10)が面白かったし昨年公開されたドキュメンタリー「ディス・マジック・モーメント」は大好きだったし、香港インディペンデント映画祭の主宰者としての八面六臂な活躍ぶりには感謝しかない、ニッポンとアジアを自在に行き来する稀有な映画人リム監督の表題作、とても良かった。バルカン半島でインディペンデント映画監督ジェイ(尚玄)と出会い別れたバックパッカーの女性エヴァ(アデラ・ソー)が消息のとだえたジェイの足跡をたどるロードムービーは、題材的にもキャスト的にも前作を見ていればよかったと今さらながら思うけれどもそれとして、旧ユーゴスラビアセルビア北マケドニアボスニアの今と過去、主人公2人をはじめ登場する人々の今と過去、さらには現実と非現実がそれこそタイトルが示すように至る所にたちあらわれてくるようなマジックリアリズム的感覚、だからこそか戦争やコロナ禍のリアルが物語にすっと入り込んでくる自然さと即興性がインディペンデントならではの佳品。

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