天国にちがいない

こと英文の原題も「It Must Be Heaven」。試写にて。先のフィルメックスでスレイマン監督作が特集上映されたさいは1本も見られずじまいでいろいろ遅きに失した感のある自分としてはこれが初エリア・スレイマン作品。イスラエルに住むパレスチナ人である監督がイスラエルとパリとNYを舞台に自分自身を演じたユーモアとペーソスが同居するささやかにして広く開かれた物語は、監督がパリに行ってからの街のどこもかしこも人影のない虚無的空間がコロナの蔓延した社会のように思えたり次第にそれがふだんイメージする雑然とした街の様相をとりもどしていくことの意味を考えたりしつつ、結局それは消化しきれないままそれでも胸に深くきざまれたのはこれはパレスチナについての映画であるということ。文学的かつ社会的な、見終わってあらためてタイトルの意味を考えないではいられない軽やかに重いメッセージを伝えてくる佳品でした。

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