Old Fox

中文の原題「老狐狸」。先日TIFFにて、今月末の台湾公開にさきがけてワールドプレミアを飾った蕭雅全監督(「台北カフェ・ストーリー」)の新作で、1989年の台湾を舞台に倹約と貯金にいそしむ実直なシングルファーザーと“勝ち組”の特権に気づいてしまった多感な年ごろの息子との揺れうごく関係性を描く家族のドラマ。父親役で近年出演作にハズレなしの劉冠廷が今回も好演、息子役の白潤音は神童と呼ばれるのも納得の名子役ぶり、そしてタイトルの老狐狸(古ギツネ。日本でいうなら古ダヌキか。一種の蔑称)を演じた名脇役・陳慕義(英名アキオ・チェン。アキオ…!?)の秘伝のタレのごとき老練の味わい、門脇麦が日本人役でなく台湾人キャラで違和感なく出演しているのも印象的な、やさしさと切なさ、孤独と救いが胸に沁み入ってくる秀作でした。

で、例によって以下余談。この作品も自分が見たのは3度目の上映回だったためQ&Aはなく、ナマ劉冠廷の姿を見ることあたわずで残念でしたが、公式サイトのQ&A映像を見る限り期待どおりの「ええ人や〜」な雰囲気でほっこりさせてもらいました。