主人公

国立映画アーカイブの特集プログラム「アカデミー・アーカイブ・フィルムコレクション」にて。同ウェブからの部分引用になりますが「人気俳優となった男が抱える不安や葛藤を実験的な構成で語る意欲作」と紹介されている、サタジット・レイ監督(原作・脚本・音楽も)の66年作品。〝オプー三部作〟や「ビッグ・シティ」などこの巨匠の特に有名な作品しか見ていない万年初心者ながら滅多にない貴重なチャンスのような気がして足を運んで、大正解。映画賞の授賞式に出席のため付き人もつけず単独で長距離寝台列車に乗った人気スターが、同乗の一般人の憧憬や好奇や時には辛辣なまなざしにさらされる中で次第に本来の自分と向き合っていくヒューマンドラマにしてひそやかなメロドラマは、通常触れ合うことのない者同士の距離感がほぼ強制的にとりはらわれ、それぞれの人生に影響をもたらす一種の旅の魔法のような感覚にとらわれる期待以上の傑作でした。