母の聖戦

こと原題「La Civil」。オンライン試写にて。誘拐事件が年間約6万件と推定され迷宮入りするケースも多いらしいメキシコを舞台に、年ごろの娘を誘拐され、あてにならない警察をよそに自力で捜査を始めた母親の孤独と執念をたえまない緊迫感とともに描き、昨年の東京国際映画祭コンペで(上映タイトルは「市民」)審査員特別賞を受賞した、81年生まれの女性監督テオドラ・アナ・ミハイによる長編劇映画第1作。チャウシェスク政権下のルーマニアに生まれベルギーでの暮らしを経てアメリカで映画を学んだという監督自身の経歴も相当に劇的と思われますが、娘を誘拐されたメキシコ人女性の実体験をもとにまずドキュメンタリーを撮るつもりでいたのが結果的に劇映画となるまでの経緯(こうした関連情報は映画を見たあとで読みました)がまたすさまじく、映画ともども苦くヘビーな後味をかみしめております。ダルデンヌ兄弟やクリスチアン・ムンジウら大物映画人がプロデューサーに名を連ねる、ソリッドで堂々たるワールドシネマ。

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