ワン・セカンド 永遠の24フレーム

こと原題「一秒鐘」。先日劇場にて。文革下の中国、砂漠に隣接する辺境の町で、会えなくなって久しい娘が映画本編の前に流れるニュース映像に写りこんでいると聞きひと目娘の姿を見たくてはるばる映画館にやってきたボロボロの姿の男と、わけあってどうしてもフィルムを盗み出したいボロボロの姿の娘が出会う、あふれんばかりの映画愛とノスタルジーと苦難の時代の記憶が心ゆさぶる張藝謀監督の原点回帰的作品。本作はもともと19年のベルリン映画祭でオープニングを飾るはずが「技術的な問題」(出た!いつもの!)により出品取り消しとなったのち翌年中国で公開となり、その「問題」とされる何かが調整されて日の目を見たのかなと行間にも思いを致しつつじっくり味わいました。あとから思うとあらすじ自体は数行で書き終わってしまいそうにシンプルなのに、先の読めない展開でみじんも退屈させない作りはさすが名匠のわざ。憑依型俳優(たぶん)の張譯のギラギラした切迫感と名優・范偉の盤石のふんわか感が相殺的に融合しているのも良かった。「我的母親父親」のセルフパロディか!?としか思えないショットには一瞬噴きましたが、張藝謀の趣味、もとい遊び心ととらえておきます。新たな謀女郎(イーモウ・ガール)劉浩存は起用が決まってから実際に撮影に入るまでに何年もかかったため少女から大人になってしまったらしく、それでもちゃんとミドルティーンに、というかほとんど男のコにしか見えず、この映画のために20斤(=10キロ)痩せたという主役の張譯ともども砂漠の中を走ったり体力勝負の現場もこなした好演ぶりでさまざまな賞を獲り、監督の次回作「懸崖之上」にも出演しています。

以下余談ですが、抗日戦争時が舞台のスパイ映画「懸崖之上」ってニッポン公開ありですよね?まさか公開しないとかないですよね?ちなみに出演者の顔ぶれは引き続いての張譯と劉浩存に加えて于和偉、秦海璐、朱亞文、倪大紅、李乃文、雷佳音、余皚磊、とかとかえらいことになってます。むちゃくちゃ見たいです。

もひとつ余談。映画に出てくる砂漠はもしかしてと思ってあとから撮影場所を調べてみたら敦煌の鳴沙山で、ビンゴでした。観光旅行で行ったことがあり、忘れられない風景です。

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