春江水暖

東京フィルメックスにて。まだ30そこそこの顧暁剛監督のこれが初監督作。例によって何にも知らずに観たのですが、お見事。自分としては今年有数の名品と思いました。だから映画はやめられない。とくに映画祭はこういう邂逅があるからありがたい。(もちろん全作品を観られるわけではなく結果的に見損ねた名作も多々あるはずだけれど)

富春山居図」で知られる杭州の富春江を舞台に描かれる、ある家族三代の肖像。それは悠久の河の流れと時間の流れの中につかのま浮かび上がる背景の1つに過ぎないごくパーソナルな物語であると同時に、どの家族にもその家族なりのドラマがあるのだと観る者の個人的記憶と呼応して再認識させてくれる普遍的な物語でもあり。奇跡的なまでの悠然たる長回しも、誰一人知った顔のない出演者たちがほとんど監督の身内や知人だというのも驚きでした。