トレイシー

こと原題「翠絲」。TIFFにて観賞。妻子ある中年男がかつて恋心を抱いていた高校時代の親友の死をきっかけに自身の秘めてきた女性性と向き合う。。とざっくり書くとあーなるほどそれ系の話なのねとカテゴリー分けされておしまいになってしまうかもしれないけれどもそんなざっくりした話ではない多面的で不安定な中にもやさしさのにじむ深い人間ドラマ。香港映画界有数の名バイプレイヤー、黒仔ことフィリップ姜皓文のこれまで見たことがないくらい(いや、自分が気づかなかっただけでこれまでもそうだったのかも)繊細な表情やしぐさ、ついには思いがけない美しさにハッとするほど。長いキャリアの中で熟成されてきたベテランの味わいが今回運命的な役どころを得ていよいよ影帝も見えてきたような気がいたします。妻役の恵英紅の絶対的安定感をはじめ助演の面々も、まだ20代の若さの李駿碩監督もGJ。