台湾新電影時代

先日試写にて鑑賞。昨年の大阪アジアン映画祭でも見ていたので2度目でしたが、あらためてとても贅沢なドキュメンタリーでした。贅沢というのは、1980年代に香港ニューウェーブと相前後して台湾映画界に新しい潮流をもたらし世界的にも高く評価された台湾ニューシネマ(台湾新電影)の何がどう画期的だったかを振りかえるドキュメンタリーなのですが、地元台湾はもちろん香港、中国、欧米や日本の著名な映画監督や評論家、映画祭ディレクターがコメントを寄せた、そのコメントの今なおすぐこの間のことのように興奮気味に語られる記憶の鮮烈さと(中にはごくあっさりしたものもあるけれどそれはそれで正直な)それぞれ短いながらもコメンテーターの個性がこれまた鮮烈にとらえられているという意味での贅沢さ。とりわけウププと笑えてしまうほどユニークなのがオリヴィエ・アサヤスと王兵で、どちらも対談形式(他の人たちの多くは単独インタビュー)なのに全然相手の話を聞かないというか、王兵に至っては相手が反論しかけると「俺に言わせろ」とさえぎって持論を展開しまくるキャラが印象的で、それだけに本人が影響を受けた台湾新電影への思い入れの強さもくっきりときざまれておりました。それとまた印象的だったのは、各コメンテーターの(本人が選んだのか謝慶鈴監督が選んだのかは不明ながら)インタビューに応じている場所。クラシックで風情のあるカフェだったり、由緒ある旅館だったり、公園だったり、街角だったり、あるいは映画の中で使われているホテルだったり、中には普通にオフィスだったりもするんですが、カメラワークや編集全体がさりげなくとてもオシャレな感じ。
本作は「台湾巨匠傑作選2016」(4月30日から6月10日に新宿K`s cinemaにて)の開催記念公開作品で、本作を含む全23本の台湾巨匠傑作選のラインナップもすばらしいので、どちらもお楽しみに。