「父の秘密」「ハンナ・アーレント」

昨日今日と試写にて観賞。
テーマもモチーフも別々の映画ですが、この2本を続けて見ることではからずも胸に刻まれた共通のキーワードは「言葉」と「思考停止」でした。
前者(公式サイト)は物語自体はフィクションながらモデルとなった人物がいるそうで、突然の事故で妻を失った男とその娘の物語。それぞれ深い喪失感の中で肩を寄せ合うように新しい土地で新しい生活を始めようとするものの、互いに「本当に語られるべきこと」が一度として口にされないまま「普通の父娘のやりとり」と「学校の生徒たちの空虚な会話」ばかりが全編に垂れ流されていく痛ましさ、集団的悪意(自分だけが悪いんじゃないという)の中で摩耗していく思考力の脆弱さに震撼する思い。
後者(公式サイト)は実話にもとづいており、自身のたぐいまれなる知性と見解に基づいた著作を通じて語られた言葉が世界規模で大炎上(その多くは感情的な反応で、たとえば昨今のブログとかツイッターでしばしば見られるもの)する結果となり数少ない理解者を除いて多くの友人を失った哲学者ハンナ・アーレントの強靭な信念と精神力のありようにこれまた深く考えされられました。終盤近く、四面楚歌となった彼女の渾身の演説は圧巻。