偽りの隣人 ある諜報員の告白

オンライン試写にて。監督は「7番房の奇跡」のイ・ファンギョン、主演はオ・ダルスとチョン・ウ。フィクションとあらかじめ断り書きが出るものの85年の韓国で大統領選に出馬のため米国から帰国した野党政治家が拉致され自宅に軟禁という設定から故・金大中大統領を連想せずにはおれない、前半は笑いどころが多く政治コメディかと思わせてどんどん深刻な話になっていく社会派サスペンス。性犯罪疑惑で約2年封殺されていたオ・ダルスの復帰作ということもあり、その久々に見る味わい深い顔つきにぐっとくるものあり。実際には本作の撮影中にセクハラを暴露され公開に影響が出たとのことで、みそぎをすませて復帰というのとはちょっとちがい、また当の疑惑については結果的に嫌疑なしとの判決が出たものの(でないともう表舞台には出てこられなかったかも)キャリア的にも精神的にも相当なダメージになったはずで、そんな彼の演じる国家安全政策部にマークされ家族ともども命の危険にさらされる政治家という役どころに感慨もひとしおです。もう1人の主演チョン・ウも、実はどの映画で見たのか思い出せないんですが見た顔で(すみません!)いい役者さんなのねと今回ようやく認識いたしました。「タクシー運転手」とか本作も含めて韓国の民主化への道のりを学ばせてくれる映画群をいろいろ見てきてあらためて印象に刻まれるのは、長い時間をかけ多くの犠牲をはらいながら不屈の精神で手にした民主国家としての草の根の強度。ジャパン・アズ・ナンバーワン時代の幻想をひきずりながら加速度的に衰退しつつあるニッポンとちがうのは当然なのだなあと思わざるを得ないのでありました。

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