作家、本当のJ.T.リロイ

試写にて鑑賞。破天荒な過去を持つ謎の美少年ベストセラー作家として話題になり、各界のセレブたちにもてはやされカンヌ映画祭の舞台にも原作者として立っていたJ.T.リロイ。実はそんな人物は実在せず、リロイの女性マネージャーが実際の執筆者で、その恋人の妹がJ.T.リロイとしてふるまっていたという驚きの事実がマスコミにあばかれて大スキャンダルになった…というのを自分はこの映画で初めて知ったんですが、結果的に詐欺罪で訴えられた当の本人がそのてんまつを語るドキュメンタリー。J.T.リロイという別人格にスイッチすることで破滅的かつ魅力的な小説を書くことができたためにウソがねじれて一種のリアルとなって独り歩きを始め、そのことにあまり罪の意識もなく謝罪もせず正当化すらしている当人の人格は精神医学的にはなんらかの病名がつくのかもしれないけれど、どこまでが異常でどこからが芸術家的な非常識なのかはなんともいえないものがあり、ウソにウソを重ねてきた当人がカメラの前で話している内容からして全部が本当のことかどうかあやしい気がしてくる疑惑の入れ子細工のような映画で、『FAKE』とはまた全然別種のうすぐらい闇をのぞき見たような気分に。
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