凱里ブルース

こと原題「路邊野餐」。昨日、中国インディペンデント映画祭にて鑑賞。貴州省の小さな町の診療所で働く主人公が、売られてしまった甥を探しに出かける物語。最初のほうは話の設定がバラバラにつなぎ合わされている感じで「??」だったんですが、カメラに羽がはえたかのような驚きのワンカットシーンが始まってからはまるで自分自身の過去(あるいは前世の記憶的な感覚)にスイッチが切り替わったみたいな懐かしさに時間を忘れて引きこまれ、またそのスイッチが元にもどるころにはいつまでも見ていられる気がしてました。野人とか後ろ手の姿勢とか壁に書いた時計とかカセットテープとか、不思議な記号性を帯びたものが多々。劇中に使われている歌もたぶん知らなかったのにぐっとくるものが多く、あとからクレジットでそれが伍佰や中島みゆきと分かったり、本作の音楽担当が林強だったりで、なんなんでしょうこの心地よい「やられた」感は…。本作で先の台湾金馬奨最優秀新人監督賞を(同賞では金馬史上最年少だという26歳で)受賞した畢贛監督は89年生まれ。おそるべき80后、というかあと1年で90后という若さのまぶしさよ。ちなみにこちらの記事によれば出演者はほとんど素人。主演の陳永忠は監督のおじさんで脚本を理解できないまま1シーンごとに監督の指示どおり演じたそうです。