やすらぎの森

日劇場にて。カナダ・ケベック州の森の奥深く、湖のほとりに遁世した3人の男が人知れず住んでいた。あるとき1人が死に、残り2人となった男たちの生活に2人の女性が個々の事情で入り込んできたことからそれぞれの人生に変化が生じていく。どこか「ノマドランド」とも通底する、かつそれ以上に深い覚悟と死生観と歌の数々が胸をうつ、老いと死と自由と不自由についての美しく重厚な物語。五感にしみわたりました。

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少年の君

こと原題「少年的你」。オンライン試写にて。以前中国語字幕で見ているのに冒頭であれっこういうふうに始まったんだっけと思ってしまい(汗)、でもあらかじめ物語を知って見るとその冒頭シーンで早くもぐっとこみあげるものが。。借金まみれの母親が出稼ぎで不在な中、高校での陰湿で残酷なイジメ(そして周囲の生徒たちの露骨な無関心)に耐えて受験勉強に邁進するヒロインが、親がいなくなり十代前半から一人で生きてきたチンピラ青年と出会い、次第に互いを必要としていくようになる峻烈な青春物語。ひりひりとして時に見ていてツラいものもありつつ物語それ自体のパワーと主演の周冬雨と易烊千璽がすばらしくてまったく目が離せない、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたのも納得の名作。デレク曾國祥監督、あざやかなり。

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稽古

合気クラス@I道場。しーふーいわく「形ができたら中身を入れる。習い性にして、もう形にはこだわらなくていい」「自分が相手の円周にいたらどうにもならない。相手の中心に入って、相手を円周でくずせ」「気は、思えば出る。思わないと出ない」

稽古

武器法クラス@I道場。しーふーいわく「杖は杖尻から杖先まで、線で点を通す。面で叩くな」「刀は柄頭を相手に当てるつもりで左手で突き出す。そうすると切先がぴゅんとまわる。力やスピードは関係ない」「いつも丹田に心を向けて。形に心を向けると気が上がる」「無駄を省いてシンプルにシンプルに。そのシンプルな中にすべてが含まれる」

太陽と踊らせて

先日試写にて。スペインのリゾート・アイランド、イビサ島にイギリスから移り住んで25年になる名物DJジョン・サ・トリンサと彼がジャンルを超えて自由自在につむぎ出すサウンドに魅せられた台湾生まれ東京育ちのリリー・リナエ監督が3年の月日をかけて完成した長編ドキュメンタリー。バレアリック・ミュージックというジャンル(?)は初耳で、プレスによれば「パーティサウンドとは異なる、ジャンルレスで物語にあふれた」音楽、等々説明されてるのですがとにかく百聞は一見でなく一聴に如かず。バカンス気分満点のビーチの開放感とジョンおじさんの万年青年のような笑顔がとけあって、梅雨どき&コロナ禍のジメジメ感を忘れさせてくれました。世界からパリピが集まるリゾート地とか自分には遠い世界すぎるけれど、単純にそういう人生がうらやましいとかいうことではなく、大好きな音楽を大好きなビーチで流すことを人生の喜びとするジョンおじさんの生き方のブレなさはある種の達観なり覚悟なりも含めて見る者それぞれのツボにひびく気がします。

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ヴィンチェンツォ

完走。予想どおり見始めたら止まらなくなってがっつり楽しみました。当初前知識ゼロでタイトルの意味も知らなかったんですが^^;英語ならヴィンセント、仏語ならヴァンサンにあたる人名なんですね。韓国生まれでイタリアのマフィアとなった主人公がある目的のために韓国へ戻り、はからずも悪徳企業と利権にむらがる弁護士やら検察やらがからんだ凄絶な殺し合いに発展していくクライム&アクション&リベンジもの。シリアスだったり血なまぐさかったりする展開と並行してコメディ要素もたっぷりしこまれてて、鳩の恩返しとか(意味不明ですみません、見ている人ならわかります)相当にわらかしてもらいました。名優ユ・ジェミョン先生が途中退場となったのだけちょっと残念でしたが「李泰院クラス」における彼の存在に匹敵する本作のド悪党(ども)の魅力も相当なもの。えぐいえぐい。やっぱり悪役大事。