戦火のランナー

昨日オンライン試写にて。元英国領だったスーダンは北部はイスラム教徒が多く南部は非イスラム民族が多かったことから歴史的に対立の火種をかかえ、独立後2度の大きな内戦があった。という基本的なところからしてこの映画で初めて知った自分ですが、本作はその1度目の戦火の中、このままでは死んでしまうと危惧した両親が8歳の末っ子グオル・マリアルに村から逃げるよう指示し、たった一人で生きていくこととなった彼が放浪の果てに難民としてアメリへ渡りマラソン選手としてオリンピック出場を果たすまで、その後の故国への凱旋帰国と新たな苦難を中心につづるドキュメンタリー。インド映画「ミルカ」とも重なる、生き延びるために走り、さいわいにも生き延びて、やがて走ることが自己実現に結びついた少年の、感動という言葉を使うにはあまりに過酷であまりに偶然な数奇な運命に、ただただ驚き。はからずもコロナ禍の現在、「がんばってきた選手のためにも五輪開催を」的な気持ちに自分は正直なれないですが、そのこととは別に、スーダンについて知り、IOCの内幕(いろんな意味で考えされられるところあり)が垣間見えるという意味でこの映画を見る意味は大きいと思います。

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エースの中のエース

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2にて。恥ずかしながら自分にとってJ=P・ベルモンドは超有名なのに数本しか見ていない今更聞けないナントカみたいな存在で、こうして古典的名作群をまとめて見られるありがたみを感じる今日このごろ。本日は3本見ましたが、本邦初公開という表題作がすばらしくてちょっと泣きそうに。。1936年、ヒトラー肝いりのベルリン五輪を背景に、フランスのボクシングチームのコーチとして五輪に参加することになった元空軍パイロットの主人公が両親を失った少年と偶然出会ったことから彼とユダヤ人一家をナチスから救うため大奮闘する物語。国威発揚のための五輪なんてくそくらえとなんだか現実と交錯してしまったというのもあるんですがそのきなくささを荒唐無稽な展開でおちょくりまくっていく映画的パワーに内心で拍手しつつ、本筋とはちょっと離れますがクマとの共演(!)にびっくりしたのと、サブキャラのあの2人はその後どうしたのかなと全力でツッコミを入れたくなるフォローのなさも面白すぎました。

ヴィンチェンツォ

最近話題のネトフリ ・オリジナルドラマ。見はじめました。とりあえず第1話で基本設定がほぼのみこめる(気がする)テンポの良さと個性派役者たちの顔ぶれにニヤリ。なんといっても例によって名優ユ・ジェミョンが別人! たぶん止まらなくなるので1週間くらいでコンプリートできるかなと思っております。

走れロム

試写にて。釜山国際映画祭ニューカレンツ部門(新人監督コンペ部門)最優秀作品賞を受賞するなど各国の映画祭で注目され、大阪アジアンでも特別招待作品として上映された(行かなかったもので不覚にもノーチェックでした)ベトナムの新鋭チャン・タン・フイ監督の長編デビュー作。ベトナムの労働者階級に浸透し長らく社会問題となってきた違法ギャンブル「デー」にすがる人々の日常を描き、本国では検閲に通らなかったいくつかのシーンをやむなくカットしたものの公開されると異例のヒットを叩き出した話題作で、サイゴンのほとんどスラムといえるアパートの屋根裏に住み、貧しければ貧しいほど一発逆転をねらって闇くじ(デー)にはまる住民たちからカネを集めて仲介人に渡す走り屋の少年ロムの、野生動物のような生存競争の日々の悲惨な中にもつきぬけたバイタリティと疾走感が胸にささる驚きの快作。もしかしてホンモノのストリートチルドレンをスカウトした?と思ってしまったほどリアリティあふれる主演の少年はなんと監督の実弟だそうで、そのライバルの走り屋で山猿のようにすばしこい小悪党の少年(青年?)ともども圧倒的存在感でした。

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ファイナル・プラン

こと原題「Honest Thief」。オンライン試写にて。伝説の爆破強盗vsFBI捜査官、というキャッチコピーのとおりの、いい意味で単純明快なストーリーと期待をうらぎらないリーアム・リーソンの「オレのやり方で決着をつける!」映画。なんとなく煮詰まっているときはこういう映画が一番です! 公式サイトはこちら

復讐者たち

こと英語タイトル「PLAN  A」。オンライン試写にて。第二次大戦直後のドイツで、妻と子をホロコーストで失い自身はからくも生き延びたユダヤ人の主人公が、ナチス残党を探し出して処刑するグループに志願する。やがて彼はドイツで無差別殺人を計画する地下組織の存在を知り、さらに深入りしていくが。。主演は「名もなき生涯」のアウグスト・ディール。暗殺グループの紅一点に「蜘蛛の巣を払う女」のシルヴィア・フークス(というのは見ている間はまったくわからなかった。まるで別人)。実話ベースというのが驚きで、でもそういう人たちがいてもまったく不思議はないと思えてしまう葛藤と慟哭のドラマ。ずっしりと重く、哀切なものがありました。

公開は7月23日を予定。公式サイトはこれからのようです。

インビジブル・ウェーブ

DVDにて。07年の作品で、当時はちゃんとチェックしてなくて見そびれていたペンエーグ・ラッタナルアーン監督、浅野忠信主演の無国籍風黒社会映画。ボスの命令でその妻を殺害した主人公がタイに高飛びする客船の中でボスの愛人と偶然出会い、惹かれてしまう物語。わけあって今ごろ見たのですが、シャープで、ブラックで、香港とタイが舞台で、すごく面白かった(今さらですみません)。旧作だけれど映画的感覚として全然古びていないのと、それ以上に香港とタイの風情が別に住んでたわけじゃないけど切ないくらいなつかしく感じたというのが大きかったかも。嗚呼また行きたいなあ。行ける日はくるのかなあ。