こと原題「寒夜」。55年作品。香港映画発展史探究＠国立映画アーカイブにて。50〜60年代の広東語映画黄金期の代表作の１つとされ有名な作品というのは知ってましたが初見。国立映画アーカイブさんありがとうございます。中国の文豪・巴金の同名小説の映画化で、香港の往年のトップスター呉楚帆が製作と主演を兼ね、ヒロインは同じくトップ女優白燕がつとめた、抗日戦争期の重慶を舞台に恋愛結婚し子供ももうけた知識人の主人公が犬猿の仲の母と妻の板挟みで苦しみ戦時下のストレスもあいまって仕事も体調もボロボロになっていく物語。とざっくり書いてしまうとなんか身も蓋もない感じですがそう簡単にはわりきれない含蓄と風格をたたえた文芸作品で、姑のパワハラに耐えかねたキャリアウーマンの妻に捨てられそうになるわ職場ではハブられるわでウジウジめそめそする主人公の「すべて僕が悪いんだ」的思考に正直かなり引きつつもさらに不幸な人物があらわれたり50年代の観客はこの小説や映画をどう受けとめたのだろうかと思いを馳せたりするうち次第にひきこまれて、終幕ののちはじわじわと切ない余韻が押し寄せてきました。
