クナシリ

昨日試写にて。国後といえばまっさきに思い浮かぶのは北方領土問題、あるいは♫ 飲んで騒いで 丘にのぼれば はるかクナシリに白夜は明ける♩とノスタルジーをさそう「知床旅情」の一節か。表題作は、北方四島の1つで知床半島から目視できる(ただし国後に白夜はないそうです)国後島の日常の一端を見せてくれる、旧ソ連生まれでフランス在住のウラジーミル・コズロフ監督によるドキュメンタリー。終戦後に日本人が強制退去となってから70年以上が経ち、うちすてられた暮石や寺の跡、埋もれた醤油びんや茶碗のかけらなどがわずかに日本人が住んでいた痕跡をとどめるだけの島の様子はロシアの寒村といった風情で(といっても自分はロシアに行ったことがないので脳内イメージ)、風光明媚な山もあればゴミだらけの海岸もあり。取材に応じた人々(多くは高齢)は、日本人と共存すればいいのに、もっと日本の技術を取り入れればいいのにという老人もいれば、島を返還する理由も条件もありはしないと語る企業経営者もいて、といって彼らが特に政治的意識を持っているようにも見えずただそこに住み日々を暮らしているだけという印象。監督によれば、撮影にあたっては北海道からのビザなし訪問団や現地の若者の取材は認められなったそうで、政治的な映画にしてはならぬという当局の意図を感じるものの逆にそれがよかった(?)とも思えるニュートラルさと国後島ってこういうところなのかと初めて知ることができた興味深く貴重な74分。本作は二部作になる予定で、次は根室で撮影を行うそう。そちらも完成したらぜひ見たいです。

公式サイトはこちら