スノーデン

試写にて鑑賞。NSA(米国家安全保障局)が日本も含む世界中の個人情報を収集・監視していたことを暴露し、ロシアに政治亡命した元局員エドワード・スノーデン。当時のオバマ政権を大いに狼狽させたそのスパイ映画さながらの世界的事件は、本人が信頼するジャーナリストとひそかに接触し香港のホテルの一室で撮影されたドキュメンタリー映画シチズン・フォー スノーデンの暴露」や関連書籍等で広く知られていると思いますが、本作は純粋というか純情な愛国者だったスノーデンがとびぬけた頭脳によって次第に国家最高機密を扱う立場になるにつれ職務と良心の板挟みになりついにはすべてを投げうって告発に踏み切るまでをかなりドラマチックに描いたオリバー・ストーン監督最新作。キャッチコピーは“彼は、英雄か。犯罪者か”となっていて組織からすれば裏切り者でもその組織たる政府がそもそも人権侵害的犯罪行為をしていたのだから告発者を訴追するのはそれこそ盗人たけだけしいというやつだろうと個人的には思うわけですが、あくまでこれは分かりやすく観客に届けるためのキャッチコピーであって映画はもっと複雑でグレーな国家の闇や権力の闇に切り込んで重い課題をつきつけてくる作りになっており、そしてまたドキュメンタリーではあまり触れられていなかったスノーデンのガールフレンドの存在の大きさも分かって確かに彼は完全に単独で命がけの賭けに出たけれど劇中で弁護人が言うように彼は決して独りじゃなかったというのを実感。映画ではオバマが大統領選に勝った時など数々のニュース映像も使われ、トランプ・ショックさめやらぬ中、シャレにならないブラック感も倍増。ちなみにプレスによれば本作のプロジェクトそのものがNSAに目をつけられていたらしく、スタッフはオンライン上では何も行わず手渡しで情報や素材をやりとりしていたそうで製作側の気骨もあっぱれ。今まさに見るべき映画といってよく、「シチズン・フォー」を未見の方には合わせての鑑賞をおすすめします。
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