始まりも終わりもない

先日、試写にて観賞。
自分は身体表現とか身体能力というコトやコトバが大好きで、また一方でシブかっこいいおじさま系が大好きなので、その両方の条件を満たす田中泯の主演作ということで単純にミーハーに胸をときめかせていたら、冒頭からときめきとは遠くへだたった胸苦しいような緊張感にとらわれっぱなしで、見終わったときはかなりの消耗感。それはたとえば修行僧の苦行荒行を不用意に追体験してしまったような感じで、なにしろこの老境に入った舞踊家は、1つまた1つと画面に記憶や哀しみや悟りを刻んでいくかのように、あるときは夜の新宿の人や車がしげく通る界隈のアスファルトの地べたを全裸でひたすら這いずっていき、またあるときは銀座のホコ天で紙おむつ1つあてただけの姿で十字架を背負ったキリストのように木をひきずりながら周囲の写メ攻勢などまったく目に入らず自分の中のなにものかと対峙しているかの如くただただうごめいており、映画と分かっていても見ているだけで手に汗にぎりすぎてぐったりしてしまったわけであります。でも、あとから思うとそれは、さまざまなイメージや解釈を投げかけてくるこの無言劇を見ながら自分が勝手に「生と死」「子宮回帰」「輪廻転生」といった(ありがちな)意味づけをしすぎたせいかもしれないのでした。いずれにしてもおそるべし田中泯(敬称略)。
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