囚われ人

先日、試写にて観賞。
2001年にフィリピンのパラワン島イスラム武装勢力が観光客21人を誘拐し、海や町やジャングルを移動すること延べ1600キロ。途中で殺された人、釈放された人、政府軍との銃撃戦で巻き添えになった人もおり、最終的に救出された人の拘束時間はなんと377日…。実際に起こった、そして今も未解決で正式な発表もされていない痛ましい事件をブリランテ・メンドーサ監督が渾身の映画化。
イザベル・ユペール演じる主人公が架空の設定(いわば語り部的存在)であるほかはほぼ事実にもとづいているそうで、原理主義に染まった人々とそうでない人々との絶望的な分かりあえなさ、その中でも部分的ながら微妙に醸成されていく親近感や愛情、おそらく全員の身代金がそれぞれ払われたはずなのにフランス人やアメリカ人が最後まで解放してもらえなかったのは相手国と犯人の間に立った政府関係者や軍関係者にネコババされたか最初から犯人グループとの癒着や取引があったのではないかと想像されるおぞましさ、などなど全編にわたってリアルな恐怖と哀しみが交錯する緊張の1本。「アルゴ」のような救出劇はむしろ奇跡なのかもしれないなと、ふと、香港人観光客が大勢犠牲になったバスジャック事件のことを思い出したりも。
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