香港の流れ者たち

こと原題「濁水漂流」。昨日、香港映画祭2022にて。「トレイシー」の李駿碩監督による2021年作品。金像奨・金馬奨とも数多くの部門でノミネートされ(うち金馬奨の最優秀脚色賞を獲得)、ぜひ見たかった1本で、日本語字幕付き&スクリーンで見ることができて感謝です。都市開発が進む深水埗の片隅に流れ着いたホームレスたちのその日暮らしを描く物語は、作りとしては群像劇ながら中でもムショ帰りの男(呉鎮宇・名演!)とヤク中の老人(謝君豪・名演!)の造型やリアリティがきわだっていて、見終わったときはこの2人がそれぞれ主人公の映画を見ていたような心持ちに。「私のプリンス・エドワード」とはまったく別キャラな朱柏康、やさぐれ顔でも美しい李麗珍、木仔役の柯煒林、ソーシャルワーカー役の蔡思韵も適材適所。物語はシリアスで哀切だけれども、自分は地味とは感じず。インディペンデント的というふうにも思わず、むしろ商業映画としてしっかりした骨格を持った秀作と思いました。

ちなみに終映後には若手女性プロデューサー文佩卿女史がオンラインで登場し、印象的な話をいろいろ聞くことができたんですが、会場から「木仔はなぜ(呉鎮宇演じる)輝に会いに来なかったのか」と質問が出たときは、自分も実はそこんとこ気になっていた(というか木仔が会いに来るのではと期待し、でも来なかった、それは来ることができなかったあるいは来るのが遅かったのではと自分なりに解釈していた)ので、内心で「おっ」となりました。