さよなら、ベルリン  またはファビアンの選択について

試写にて。著名な児童文学家エーリヒ・ケストナーによる唯一の大人向け長編小説でありナチス政権下で焚書の憂き目に遭ったという「ファビアン あるモラリストの物語」を原作に、第一次大戦と第二次大戦のはざま、ナチスの軍靴が聞こえはじめた1931年のベルリンを舞台とする作家志望の無職青年ファビアンをめぐる恋情や友情や希望や絶望の物語。退廃的のようで純粋、情熱的でどこか冷めてもいる主人公のままならない生きざまは90年前に書かれた物語でありながら不吉かつ切実に同時代性を帯びて迫ってくるものがあり、時代背景をある程度分かっていないと(かくいう自分も正直あやしいレベル)とっつきやすい映画とはいえないですが見終わったときには約3時間の長尺も納得でした。プレスに記載された監督のインタビュー中「私は間違いなく2022年のドイツ社会をワイマールと重ね合わせています。(中略)しかし今、ドイツだけでなく、世界中のほとんど全ての場所が同じ状況にあると言えるのではないでしょうか」というコメントが、本当にずっしりと重い。

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