アニタ

こと原題「梅艷芳」。大阪アジアン映画祭にて。冒頭のウェディングドレス姿で早くも涙目になってしまい、姉妹で歌っていた少女時代からトップ歌手への大躍進、恋愛問題、黒社会とのトラブル、レスリー張國榮やスタイリストのエディ劉培基との深い友情まで、なんだか自分が香港で同時代を生きてきたような錯覚にとらわれつつ走馬灯のように描かれる不世出の歌姫の生涯に万感胸にせまる思い。もちろんそれなりに映画的脚色がなされているし(ご存知のあの日本人アイドルの描かれ方とか)、そうしたアレンジを1つ1つ指摘できるほど事実関係を熟知しているわけでもないのですが、細部までとても心のこもった作品であることはまちがいなく、そこに一番感動したように思います。アニタにせよレスリーにせよそっくりさん的な造型ではなく奥深くからその雰囲気がたちのぼってはっとさせられたり、楊祐寧(!)演じる林國斌の〝漢〟ぶりにグッときたり。そして劉培基役の古天樂のすばらしさ。実のところこの映画が見たくて日帰りで大阪に行ったといっても過言ではないのですが、十分その甲斐がありました。