轢き殺された羊

こと原題「撞死了一只羊」。先日FILMEXにて鑑賞。王家衛プロデュース、ペマ・ツェテン監督という異色の組み合わせがまず興味をひかれるところで、だからと言って王家衛の影響とか「らしさ」を感じるかどうかは人それぞれだし感じなければいけない理由もなく、そういわれてみればという程度に於いて荒涼な砂漠や濃厚な死の気配、夢と現実の交差といった部分で「東邪西毒」をそこはかと思い出したり。とは言えあくまでペマ・ツェテン監督の文学性と色彩感覚と作風に魅入られて、それ以上でもそれ以下でもなく。どこか滑稽みをただよわすトラック運転手ジンパ(オー・ソレ・ミオを歌ってみせるシーンの愛くるしさといったら)がうかつにも羊を轢いてしまったことがきっかけで一種のパラレルワールドへ魂の半分が吸い込まれたかの如く、殺された親の復讐におもむくのだという同じジンパという名前を持つ男と出会い、道ゆきをともにする、合わせ鏡のような2人の男の幻想的で哲学的な物語。寓話的だったり象徴的だったりするセリフやエピソードの背景にあるのであろうチベットの言い伝えや仏教文化のことにうといのでひどく漠然とした感想しか言えないのが残念ですが、今回 FILMEXで見た中で個人的ベスト3に入る好きな作品でした。