「星火」「文革宣伝画」

昨日、専修大学での上映回(1月21日の拙ブログにて紹介したイベント)にて鑑賞。胡傑監督の「星火」は、大躍進政策の失敗で全国に餓死者があふれた1960年に農村の悲惨な実態を中央に伝えない地方官僚の腐敗に憤った知識人たちが制作した地下刊行物「星火」への弾圧事件、今もタブーとされる歴史の闇に切り込んだドキュメンタリー。死刑やリンチで何人もの仲間を失い、自らは懲役を経てどうにか生き延びた証言者たちのすさまじいほどの記憶力・知力・精神力、不屈の生命力に圧倒され、こうべを垂れる思いでした。
胡傑、艾暁明の両監督による「文革宣伝画(原題:紅色美術)」はタイトルどおり文革時にさかんに描かれ毛沢東の神格化に大きな役割を果たしたプロパガンダ絵画について、関係者の証言や研究者・コレクターの分析、当時の多様な記録映像で構成したドキュメンタリー。宣伝画で名を成し今も要職に就いている画家もいれば、紅衛兵として洗脳されていた当時を後悔し涙を流す画家もおり、ただし全体としては“あの時代”を告発する映画というより本質的にその延長線上にある現在をそのまま見せているというか、今後はもしかするとそれが公的に黒歴史になる日も来るかもしれないけれど少なくとも今はまだ「自分は画家だから描けと言われたものを描いた。なんであれ絵を描けることが喜びであり光栄だった」というようなことを胸を張って言える時代なんだなというのが分かった。それと、ひどく偏向したものであっても幼少期に高揚感あふれる歌や絵を通じて刷りこまれた思想教育は長じて条件反射的になつかしく楽しく思い出される可能性が高いゆえにおそろしくまたおぞましいということ。そしてさらに、どの絵も実際出来が良くてポップアートとして見れば人気が高いのはうなずけるということも。
いずれも個人的には初めて知る、もちろん初めて見る映画だったこともあって強烈な印象で、どしろーとな感想しか言えない状況ですがこういう映画を見られるチャンスがあって良かった。とりあえず当日配布されたレジュメとかネット上の関連資料を読んだりして復習や学習をするとします。